- 業種:金属加工業
- 規模:従業員20名
- 立場:二代目経営者
- テーマ:採用・人材不足
大企業の常識を持ち込んでいた
正直、自分は勤め人だった頃と同じ感覚でいました。
前職では、毎年4月になれば新入社員が入社してきました。
人員補充の申請を出せば、数か月後には中途社員が配属される。
もちろん採用担当者は苦労していたと思います。
けれど、その裏では莫大な予算が動いていたはずです。
100万円の求人広告費など、おそらく広告枠一つ分にも満たなかったでしょう。
しかし、家業を継いだ自分の会社は違いました。
100万円は決して小さな金額ではない。
それでも応募者はゼロ。
今思えば、自分は経営者になったつもりでいました。
けれど実際には、大企業の社員時代の常識をそのまま持ち込んでいただけだったのかもしれません。
夜中に見つけた一つの記事
藁にもすがる思いで開いたブログ記事には、こう書かれていました。
「大手と同じように求人サイト頼みの戦い方をしていては、予算がいくらあっても足りません。
小規模製造業が目指すべきは、費用ではなく『知恵とリアル』で勝負する泥臭い採用戦略です。」
正直、最初は半信半疑でした。
けれど記事を読み進めるうちに、心当たりがいくつも出てきました。
求人票ばかり変えていた
記事には、求職者が会社を知り、興味を持ち、応募するまでの流れが書かれていました。
その多くは無料でできることでした。
予算がないなら、頭と手を動かすしかない。
汗をかきながら行動するしかない。
当たり前のことですが、その時の自分には新鮮でした。
振り返れば、自分は応募が来ない理由を求人媒体や原稿のせいにしていました。
求人票を書き直す。
写真を差し替える。
掲載プランを変更する。
そんなことばかり考えていたのです。
けれど本当に考えるべきだったのは、別のことでした。
なぜ、この会社で働くのか。
どんな人に向いているのか。
どんな働き方ができるのか。
求職者から見た自社の魅力を、自分自身が整理できていなかったのです。
当社らしい採用を考える
そこから少しずつ考え方を変えていきました。
若くて経験豊富な人材を求めるのではなく、自社の働き方が合う人を探す。
流行りのキーワードを並べるのではなく、働く人にとってのメリットを言葉にする。
大企業の真似をするのではなく、自社らしさを伝える。
日々の業務をこなしながらだったので時間はかかりました。
派手な取り組みもありません。
けれど少しずつ、自社なりの採用の仕組みが形になっていきました。
初めて届いた応募
そしてある日。
応募通知が届きました。
最初は営業メールだと思いました。
何度も期待して裏切られていたからです。
けれど、恐る恐る開いた画面には応募者の名前が書かれていました。
思わず何度も見返したことを覚えています。
応募してくれたのは異業種からの転職者でした。
製造業の経験はありません。
けれど社会人経験が豊富で、真面目に仕事へ向き合う方でした。
技術は教えれば身につく。
そう考えれば、不安よりも期待の方が大きかったように思います。
ありがたいことに、本人も
「黙々と作業に集中できて働きやすい」
と言ってくれています。
まだ道半ば
もちろん、一人採用できたからといって問題が解決したわけではありません。
ベテラン社員の定年も近づいています。
人手不足の課題はこれからも続くでしょう。
給与の改善。
労働環境の整備。
若手が定着する仕組みづくり。
やるべきことは山ほどあります。
地元の求人誌への掲載。
SNSでの情報発信。
地域とのつながりづくり。
これからも地道な活動を続けていこうと思っています。
父親の背中
今回の採用活動を通じて、自社を客観的に見つめ直すことができました。
そして、改めて思ったことがあります。
若い頃の自分は、父親の仕事を恥ずかしいと思っていました。
油にまみれた作業服。
鉄粉で汚れた手。
大手企業で働く人たちの方が、ずっと格好良く見えていました。
けれど今は違います。
父親が守っていたのは、ただの工場ではありませんでした。
社員の生活であり。
積み重ねてきた技術であり。
地域の仕事でした。
その重みを、経営者になって初めて理解できた気がします。
だから今は胸を張って言えます。
オレの親父はカッコイイ。
そして、いつか自分もそう思ってもらえる経営者になりたいと思っています。
あなたの会社の“転機”を聞かせください
経営を続けていると、思い通りにいかないことの方が多いものです。
特に、自分が良かれと思って下した判断が裏目に出た時の苦しさは、経験した人にしかわかりません。
もしあなたの会社にも、そんな忘れられない失敗や転機があるなら、ぜひ聞かせてください。
成功談である必要はありません。
むしろ、悩みながら進んだ話にこそ価値があると思っています。
あなたの経験が、同じ悩みを抱える誰かの道しるべになるかもしれません。
