- 業種:輸送機器製造業
- 規模:従業員100名以上
- 立場:管理職
- テーマ:事業転換・販路開拓
飛行機を作ることが夢だった
自分は、飛行機が飛び交う町で生まれ育ちました。
手を伸ばせば機体に届きそうなぐらい、飛行機も戦闘機も身近な存在でした。
そして当然のように、飛行機を作りたいと思い、航空機製造会社に入社。
ネジの組み付け作業者から始まり、十数年後ーーー。
憧れだった、夢だった、国産旅客機の品質管理担当者となりました。
現場作業とはまったく違う、人々の命を預かる最後の砦としての仕事。
毎日が緊張の連続で、身も心も疲弊していきましたが、それでも夢を追い続けました。
必ず、日本初の旅客機を飛ばすのだと。
夢と仲間を失った日
しかしーーー。
何万人もの夢と希望が込められた飛行機は、ついに日本の空を飛ぶことはありませんでした。
さらに追い打ちをかけた、コロナウイルスの感染拡大。
立ち上がる気力も体力も失い、苦楽をともにした仲間たちが去っていく。
その後ろ姿を見送りながら、自分はプロジェクトを終わらせるために最後まで残り続けました。
ーーーもう、思い残すことはない。やりきったんだ。
機体も、人も、音もない工場を見渡しながら、会社を去る覚悟を決めました。
辞表を持って臨んだ社長面談
そして、辞表を胸ポケットに入れての社長面談。
社長は開口一番に言いました。
「新規事業の立ち上げを、お願いできんか?」
「・・・えっ」
「これからは、一般消費者への販路も広げていきたいんだ」
自分は入社から二十年以上、機体しか触ったことがありません。
それなのに、まさかインターネット通販事業の立ち上げを打診されるとは、さすがに予想もしていませんでした。
今思えば、社長なりの配慮だったのかもしれません。
未経験だらけの新規事業
当時の会社は、企業取引が激減した影響で給与を払うことで精一杯。
当然ボーナスの支給もなく、半数以上の社員が会社を去っていきました。
会社に残った人間も、決して余裕があったわけではありません。
会社が倒産するかもしれない。
このまま残り続けていいのだろうか。
そんな不安を、誰もが心のどこかで抱えていたと思います。
それでも諦めず、逆境の中でも活路を見出そうとする社長の姿に心を打たれ、自分はインターネット通販事業の立ち上げに奔走しました。
砕け散った夢を忘れるためだったのかもしれません。
あるいは、自分自身も会社と一緒に生き残りたかったのかもしれません。
触ったこともない機械を、年下の社員に教わりながら操作を覚える。
書いたことのない設計図を作る。
一般消費者向けの商品を考える。
けれど、それらを売る方法がわからない。
マーケティングの知識もない。
新規開拓の営業経験もない。
今までの経験が、そのまま通用する世界ではありませんでした。
それでも前に進み続けた
役員の紹介で経営コンサルタントの指導を受けたりもしました。
やったことのないテレアポもしました。
飛び込み訪問もしました。
朝から晩まで動いても成果が出ない日もありました。
断られることの方が多かったと思います。
この商品は本当に必要とされているのか。
この事業に意味はあるのか。
そんなことを考えながら車を走らせた日も、一度や二度ではありません。
それでも売り続けました。
会社のために。
部署のために。
そして、自分自身のために。
気がつけば、少しずつ取引先が増えていました。
問い合わせも入るようになりました。
大成功とは言えません。
ですが、なんとか会社も、部署も、自分も、生きながらえることができました。
再び訪れた転機
そして現在ーーー。
コロナは落ち着き、企業取引も復活。
自分自身も、異動前のつながりから安定して仕事をいただけるようになりました。
そしていつしか、通販サイトは、お荷物扱いされる存在になっていました。
会社の業績は安定して伸びている。
けれど、また同じことが起きたらどうだろう。
主要取引先の発注が止まったら。
市場環境が大きく変わったら。
企業取引だけに頼る経営で、本当に大丈夫なのだろうか。
そんな不安が完全になくなったわけではありませんでした。
「自動で新規の問い合わせが来るようにしないといかんな」
社長のぼやきを聞く機会が増えていきました。
そんなある日。
一人の人物が部署にやってきました。
「通販サイトの運営方針を変えませんか?」
あなたの会社の“転機”を聞かせください
世の中には、成功事例や成功法則があふれています。
けれど私は、経営者が苦しい状況の中で何を考え、何を守り、何を捨て、どんな決断をしたのか。
その記録にこそ価値があると思っています。
成功した話でなくても構いません。
発展途上の挑戦でも、途中で方向転換した話でも構いません。
会社を守るために悩んだこと。
社員や職人を守るために決断したこと。
あるいは今まさに、次の一手を模索していること。
もしよろしければ、あなたの会社での出来事を聞かせていただけませんか。
あなたの経験が、同じような悩みを抱える誰かのヒントになるかもしれません。
