飛行機一筋20年。突然インターネット通販を任された男の転機【後編】

  • 業種:輸送機器製造業
  • 規模:従業員100名以上
  • 立場:管理職
  • テーマ:事業転換・販路開拓

「売れたぞ!」が「売れてしまった」に変わった日

 ECサイトがお荷物になった理由は単純でした。

 一般消費者向けに数千円の商品を売っても、大きな利益にはならない。

 それだけならまだよかったです。

 一番の問題は、本業である企業向け製品の製造作業を圧迫してしまうことでした。

 とくに企業取引が回復してからは、その傾向がより顕著になりました。

 以前は、

「売れたぞ!」

と喜んでいた注文も、

 いつしか、

「売れてしまった」

になりました。

 現場は忙しい。
 納期は待ってくれない。
 人手も限られている。

 その中で数千円の商品を一つひとつ対応することに、どれほど意味があるのでしょうか。

 そんな空気が、部署の中にも漂い始めていました。

新しい取引先との接点を作りたい

 しかし社長がよく口にしていた、

「インターネットからでも法人注文が入るようにしたい」

という考えには、自分も同感でした。

 大口企業に依存し続ければ、いつまたコロナの時と同じような状況になるかわからない。

 景気が悪くなってから、慌てて営業先を探す。

 電話帳を開き、上から順番に朝から晩までテレアポをする。

 そんなことを繰り返していては、会社も社員も疲弊するだけ。

 新しい取引先との接点は、常に作っておくべき。

 それも、人や時間をできるだけかけずに。

 けれど、そんな都合のいい方法があるとは思えませんでした。

ECサイトは「売る場所」ではなかった

 そんな時、社長が一人のコンサルタントを連れてきました。

「ECサイトの使い方を変えてみませんか」

 その提案を聞いた時、自分は正直半信半疑でした。

 部署の立ち上げの時も、別のコンサルタントから様々な話を聞きました。

 確かに、考え方は勉強になる。

 理論も理解できる。

 けれど結局は、自分たちが動かなければ何も変わりません。

 どんなに立派な話でも、現場で実行できなければ意味がない。

 ところが、その提案は少し違っていました。

 それまでの自分は、ECサイトを「商品を売る場所」だと思っていました。

 しかし、もし。

 ECサイトが売上を作る場所でなかったら。

 未来の取引先と出会う場所だとしたら。

 新しい問い合わせの入口だとしたら。

 考え方は大きく変わります。

結果の前に考えるべきこと

 振り返れば、自分たちはずっと結果だけを見ていたのかもしれません。

 売れたか、売れなかったか。

 問い合わせが来たか、来なかったか。

 しかし、その前に考えるべきことがありました。

 自分たちは誰に何を伝えたいのか。

 どんな会社に知ってもらいたいのか。

 困っている人は何に悩んでいるのか。

 それらを整理することなく、とにかく売ろうとしていました。

 もちろん、考え方が変わったからといって、翌月から問い合わせが倍増したわけではありません。

 新規取引先が倍増したわけでもない。

 けれど、一つだけ変わったことがあります。

 以前よりも、やるべきことが見えるようになったこと。

 今まで点だった取り組みが、少しずつ線でつながり始めた、そんな感覚が今はあります。

転機に備えて、種をまく

 飛行機も、いきなり空を飛ぶわけではありません。

 何年にも及ぶ、

 設計。

 試験。

 改善。

 その積み重ねの先に、大空へ向かって飛び立つ。

 新しい取引先との出会いも、きっと同じです。

 定年が目前に迫った今、こう思います。

 転機は突然やってくる。

 けれど、その時になって慌てるのではなく、平時から次の可能性を育てておくことが大切なのだと。

 あの日、夢が終わった時には想像もしませんでした。

 まさか、自分がインターネットを通じて、新しい販路づくりに関わることになるなんて。

 いつでも転機は、予期しないタイミングでやってくる。

 だからこそ、人生は面白いのかもしれません。

あなたの会社の“転機”を聞かせください

 世の中には、成功事例や成功法則があふれています。

 けれど私は、経営者が苦しい状況の中で何を考え、何を守り、何を捨て、どんな決断をしたのか。

 その記録にこそ価値があると思っています。

 成功した話でなくても構いません。

 発展途上の挑戦でも、途中で方向転換した話でも構いません。

 会社を守るために悩んだこと。

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 もしよろしければ、あなたの会社での出来事を聞かせていただけませんか。

 あなたの経験が、同じような悩みを抱える誰かのヒントになるかもしれません。

経営者のターニングログとは

『経営者のターニングログ』は、小規模製造業の経営者様がこれまでに乗り越えてきた「苦境」と「決断」を形に残す場所です。

下請け脱却、BtoBシフト、大赤字からの大逆転――。

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