求人広告に100万円。応募者ゼロだった二代目社長の転機【前編】

  • 業種:部品加工業
  • 規模:従業員70人
  • 立場:経営者
  • テーマ:採用・人材不足

父親の背中が嫌いになった日

父親が四十年前に創業し、生まれた時から鉄粉の匂いと金属を打つ音に囲まれて育ちました。

子どものころは、手や頬を黒くした父親がかっこよく、自慢でした。

しかし十代半ばになった時、クラスメイトの一言で、かっこいい自慢の父親が、ダサくて恥ずかしい父親になってしまいました。

ドラマや雑誌に出てくるかっこいい大人は、手も顔も汚れ一つなく、スーツを着こなし、オシャレできれいなオフィスで働いている。

―――それに比べてオレの親父は。

一度そう思ってからは、工場からも父親からも距離を置くようになりました。

そして就職先は、家業とはまったく関係のない業界を選びました。

家業とは違う世界へ

きれいなオフィスでスーツを着て働く毎日。

パソコンで数字を入力し、資料をつくり、プレゼンをし、契約をとり、また資料をつくる。

周囲から見れば、昔思い描いていた「かっこいい大人」になれたのかもしれません。

けれど、心のどこかに違和感がありました。

何かを売っている。

しかし、自分は何を売っているのだろう。

そんなことを考える日が増えていきました。

そして不思議なことに、思い出すのは、顔も作業服も鉄粉で汚れた父親の姿ばかりでした。

廃業の話

実家に帰省したある日。

父親の口から、廃業を告げられました。

いつかは来ると思っていました。

だから、

「お疲れ様」

そう言うつもりでした。

けれど、口から出たのは別の言葉でした。

「継がせてくれないか」

父親は一瞬目を丸くしましたが、小さく頷いてくれました。

二代目として見た現実

家業を継ぐと決めてからは、目まぐるしく日々が過ぎていきました。

そして迎えた入社初日。

社員への挨拶で並んだ顔を見た瞬間、愕然としました。

そこにいたのは、子どものころから見慣れた顔ばかりだったからです。

変わったのは、顔に深く刻まれた年齢の証。

このままでは赤字倒産より先に、人手不足で会社が終わる。

そんな危機感が頭を支配しました。

それまで何カ月もかけて考えていた事業計画は、一瞬で吹き飛びました。

まずは人を採用しなければならない。

そう考えた自分は、若手採用に全力を注ぐことにしました。

求人広告に100万円を投じた

大手求人サイトと契約しました。

求人市場のトレンドだというキーワードを募集要項に詰め込みました。

「若手活躍中」

「未経験歓迎」

「働きやすい職場」

「アットホームな雰囲気」

求人会社から提案された言葉を信じて掲載しました。

小さな会社はまず知ってもらわないと始まらない。

露出を増やすことが大切だと言われました。

できる限りの予算を使いました。

求人広告費は、気がつけば100万円を超えていました。

応募者ゼロ

しかし結果は残酷でした。

一年経っても応募者はゼロ。

応募通知が来たと思えば営業メール。

期待して開いては落胆する。

そんなことを何度も繰り返しました。

求人会社に相談し、

募集要項を修正し、

掲載写真を変え、

原稿を書き換えました。

それでも何も変わりませんでした。

今思えば、自分は応募が来ない理由を求人媒体や原稿の問題だと思い込んでいたのかもしれません。

会社そのものではなく、募集要項ばかり変えようとしていました。

けれど当時は、そんなことに気づく余裕もありませんでした。

自分の失敗が会社を苦しめる

100万円。

それは小さな会社にとって決して小さな金額ではありません。

この100万円を取り戻すためには、さらに売上を上げなければならない。

けれど、それを社員にお願いするのは酷なことでした。

なぜなら、この失敗は自分の判断によるものだったからです。

今いる社員は十分頑張ってくれている。

それなのに、自分の失敗の尻ぬぐいまでさせるわけにはいかない。

そう思えば思うほど苦しくなりました。

夜中の検索、転機の入り口

負のスパイラルから抜け出す方法がわかりませんでした。

昼は仕事。

夜は不安。

布団に入っても眠れず、スマートフォンを開く。

採用。

求人。

人手不足。

製造業。

二代目。

そんな言葉を何時間も検索し続けました。

そして、ある夜。

一つの記事タイトルが目に留まりました。

「小規模製造業の求人は、接客業に疲れた転職者を狙い撃ち!」

思わず指が止まりました。

今まで聞いたこともない考え方でした。

けれど、そのタイトルの先に、自分たちが進むべき新しい道があったのです。

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あなたの会社の“転機”を聞かせください

経営を続けていると、思い通りにいかないことの方が多いものです。

特に、自分が良かれと思って下した判断が裏目に出た時の苦しさは、経験した人にしかわかりません。

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お送りいただいた内容は、問題解決の事例(ケーススタディ)として、当サイトで丁寧に編集してご紹介させていただく場合がございます(匿名・仮名可)。

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