この記事を読み終わるころには…
✓新規開拓を追い続けた先に何が起きるのか、実体験から理解できます
✓「現状維持」と「深耕」がどう違うのか、気づきの経緯とともに整理できます
✓このサイトで発信している「既存顧客の深耕」というテーマの根拠となる実務経験を確認できます
結論
■新規開拓を追い続けると、売上は常に波を打ち、安定しない状態が続く
■定期訪問や関係維持は必要だが、それだけでは「現状維持」であって「深耕」ではない
■顧客の内部を知らずに続ける関係は、担当者が変わるだけで消えることがある
新規開拓だけを続けた時に起きていたこと
新規を追い続けていた時期の話
営業の世界には、どこか共通した空気があります。
「新規開拓こそ営業の仕事だ」
という空気です。
新規顧客を獲得すれば評価される。
大型案件を取れば社内で話題になる。
一方で、既存顧客との関係を丁寧に育てても、それは当たり前のこととして扱われがちです。
私自身も、その空気の中で営業をしてきました。
常に次の見込み客を探す。
次の商談を作る。
次の案件を追う。
しかし、新規開拓を追い続けるほど、ある問題が大きくなっていきました。
売上が安定しないのです。
案件が取れる月もあれば、ほとんど成果が出ない月もある。
数字は常に波を打ち、気が付けば「次の新規」を探し続ける状態になっていました。
そんな状況を変えるきっかけになったのが、既存顧客の深耕でした。
この記事は体験記録です。既存顧客との関係をどう広げるかの具体的な考え方は、 新規開拓より成果が出た。既存顧客を深掘りするという考え方にまとめています。
最初の気づき:既存営業は新規営業より圧倒的に話が早い
Web制作会社で感じた違和感
個人飲食店向けのWeb制作会社で営業をしていた頃、新規営業と既存営業の両方を担当していました。
既存営業では、
- ホームページのリニューアル提案
- 予約機能の追加
- SNS連携の導入
などを提案していました。
やっていて感じたのは、新規営業との難易度の違いです。
既に取引がある。
こちらを知ってもらえている。
一定の信頼関係ができている。
その状態から話を始められるため、商談は驚くほどスムーズでした。
今振り返ると、この時点で答えは見えていました。
しかし当時は、
「既存営業は楽だな」
程度にしか考えていなかったのです。
人材派遣会社で気づいた「現状維持の罠」
既存顧客を担当した当初
引き継いで続けていた営業スタイル
■定期訪問をする
■困り事を聞く
■技術者の状況を確認する
→ 関係は良い。契約も続いている。それなのに売上は伸びなかった。
既存顧客深耕の本質を理解したのは、その後に勤務した技術者専門の人材派遣会社でした。
担当した顧客は既に取引が始まっていました。
複数の技術者が常駐し、毎月契約が継続している状態です。
一見すると安定していました。
しかし実際には、売上はほとんど増えていませんでした。
前任者のやり方を続けてみた
当初は前任者のやり方をそのまま引き継ぎました。
定期訪問をする。
困り事を聞く。
技術者の状況を確認する。
いわゆる関係維持型の営業です。
もちろん必要な仕事です。
ただ、それだけでは何も変わりませんでした。
関係は良い。
契約も続いている。
それなのに売上は伸びない。
担当して数か月が経った頃、ようやく疑問を持ち始めました。
気づいたこと:「顧客の中」をほとんど知らなかった
現状維持(やっていたこと)
深耕(必要だったこと)
売上が増えない理由は単純でした。
私は顧客のことを知っているつもりで、実際には何も知らなかったのです。
ほとんど把握できていなかったこと
■どの部署が人手不足なのか
■次にどんな案件が始まるのか
■どんなスキルが不足しているのか
■採用計画はどうなっているのか
→ 顧客を理解していない状態での関係維持は、深耕ではなく現状維持だった。
だから提案も売り手都合になります。
「空いている技術者がいます」という提案しかできないのです。
顧客を理解していない状態で関係維持だけを続ける。
それは既存顧客深耕ではありませんでした。
単なる現状維持です。
そして現状維持は、時間とともに競争力を失っていきます。
方針転換:「顧客の中に入る営業」に変えた
「顧客の中に入る」設計に変えた
核になる人材を配置した
そこで営業の考え方を変えました。
まず優先したのは、顧客先で中心的な役割を担える技術者を配置することです。
単なる人員補充ではありません。
現場の情報が自然と集まるポジションを作ることが目的でした。
すると、これまで見えなかった情報が入るようになりました。
「来月から工程が増える」
「新しい案件が始まる」
「教育担当が不足している」
こうした情報が早い段階で把握できるようになったのです。
提案のタイミングが変わった
情報が入ると営業の質が変わります。
これまでは、「人が空いています」という後追い提案でした。
しかし、「来月から忙しくなると聞いています。今から準備しませんか」という先回りした提案ができるようになったのです。
顧客から見れば、自社の状況を理解してくれるパートナーに見えます。
結果として提案の採用率が上がりました。
既存顧客の横展開を意識した
もう一つ意識したのが横展開です。
例えばA部署で成果が出ている場合、同じ会社のB部署やC部署にも似た課題が存在することがあります。
そこで、「A部署ではこうした形でお役に立てていますが、他部署でも同じような課題はありませんか」
という提案を行うようになりました。
これは新規開拓とは大きく違います。
既に社内で実績があるため、「あの部署が使っている会社なら安心だ」という信頼が働くからです。
ゼロから関係を作る必要がありません。
営業効率は圧倒的に高くなります。
結果として起きたこと
■契約継続率が向上した。現場が安定し、顧客との関係が強くなったから
■単価交渉が通りやすくなった。顧客への貢献度が高まると、価格だけで比較されにくくなったから
■増員提案の成功率が上がった。顧客の内部状況を把握しているため、必要になる前に提案できるようになったから
■一社から得られる売上が大きく伸び、新規開拓への依存が下がった
方針転換後、売上構造が変わりました。
新規顧客を増やしたわけではありません。
既存顧客を深く理解し、関係を広げた結果です。
本当の学び:既存顧客深耕に必要な3つの視点
1. 現状維持と深耕を区別する
定期訪問をする。
困り事を聞く。
関係を維持する。
これらは大切です。
しかし、それだけでは売上は増えません。
既存顧客深耕とは、「どこを広げるか」を考える営業です。
2. 顧客の内部を知る
深耕営業の出発点は情報です。
担当者との関係だけでは足りません。
部署の課題。
採用計画。
設備投資。
新規案件。
そうした情報を把握することで初めて提案の精度が上がります。
3. 横展開を設計する
既存顧客の中には、まだ接点のない部署や担当者がいます。
そこへどう広げるか。
この視点を持つだけで、一社から生まれる売上は大きく変わります。
小規模製造業こそ既存顧客深耕が重要
担当者との関係に依存した営業のリスク
■担当者が異動・退職するだけで、関係がリセットされる
■窓口が一人しかいないため、情報が偏り提案精度が上がらない
■横展開のきっかけをつかめず、取引が広がらない
→ 必要なのは「担当者との関係」ではなく「会社との関係」をつくること。
製造業では、一度取引が始まると長く続く傾向があります。
だからこそ既存顧客との関係が重要です。
複数部署との接点を持つ。
複数担当者と関係を築く。
それが既存顧客深耕の本質だと私は考えています。
なぜこの経験がターニングログにつながるのか
新規開拓への疲弊は、多くの製造業経営者が抱える悩みです。
展示会に出る。
営業メールを送る。
飛び込み営業をする。
しかし成果が安定しない。
その原因の一つは、既存顧客へのアプローチが現状維持で止まっていることかもしれません。
新規開拓は必要です。
ただし、それだけでは売上は安定しません。
既存顧客を深耕しながら新規開拓を進める。
この両輪が揃って初めて、営業は持続可能になります。
既存顧客深耕の具体的な方法は、以下の記事にまとめています。

