※この物語は、小規模製造業で実際によくある課題や経験をもとに再構成したフィクションです。
前回まで:あの日のラーメン屋と、うちの会社は同じだと気づいた恒一。選ばれる理由は必要だと分かったが、自分の会社の得意が何なのかは分からない。(第5話を読む)
何が得意なのか。
考えても、考えても分からないまま、発注減の期日は近づいていた。
分からないなら、とにかく動くしかない。
そう思って、朝から晩まで、商談を詰め込んだ。
行けそうな先は、単価も関係なかった。突発でも構わなかった。
とにかく、空いた予定を埋めるように商談を詰め込んだ。
深夜、車を走らせながら、今日何件回ったかも思い出せなかった。
家に着くと、リビングの電気がついていた。
妻が、起きて待っていた。
「おかえり。ご飯、食べた?」
「ああ、適当に」
ソファーに座ると、妻がじっとこちらを見ていた。
「最近、忙しくしすぎているみたいだけど、大丈夫?」
「……大丈夫だよ」
大丈夫じゃなかった。
でも、これ以上妻に負担をかけたくなかった。
黙っている私に、妻が小さく言った。
「良い時も悪い時も分かち合うって、言ったじゃない」
家賃も支払えなかったラーメン屋の頃に言ってくれた、お守りのような言葉。
その一言で、ゆっくり、口が開いた。
発注が三割減ること。職人に釘を刺されたこと。
――自分の会社の得意が、何なのか分からないこと。
妻は黙って聞いていたが、しばらくしてからこう言った。
「ねえ、ラーメン屋の頃は、どういう店にしたかったの?」
急に問われて、一瞬言葉が出なかったが、思い出すのに時間はいらなかった。
「……お客さんに喜んでもらえて、続けられる収入があって、長く愛される店にしたかった」
自分で言って、ハッとした。
「会社もそうなんじゃないの?」
業態が違うだけで、目指す姿は変わらないのかもしれない。
その夜から私は、「何をするか」ではなく「どんな会社にしたいのか」を考え始めていた。
誰に、何を提供すれば喜んでもらえるのだろうか。
今日の主人公のノート
□ 分かったこと
・目指す姿は、業態が違っても同じだった(嗜んでもらえて、続けられて、長く愛される)
□ まだ分からないこと
・誰に、何を提供すれば嗜んでもらえるのか
□ 次に調べること
・まずは、今のお客さんに聞いてみよう
次回予告
数少ない既存顧客に、思い切って聞いてみることにした恒一。そこで返ってきた言葉は、予想外のものでした。
▶ 第7話:実力以下の仕事しかしていなかった、と気づかされた
運営者の実体験はこちら
私も以前、「何をやるか」ではなく、「どんな事業を続けたいのか」を考え直したことがあります。
その判断が、その後のBtoBへ舵を切るきっかけになりました。
あなたの経験をお聞かせください
あなたの会社が目指す姿を、最近誰かに話したことはありますか。
話してみて気づいたことや、意外だった反応があれば、ぜひ聞かせてください。

