※この物語は、小規模製造業で実際によくある課題や経験をもとに再構成したフィクションです。
前回まで:妻の一言で、目指す姿は業態が違っても同じだと気づいた恒一。誰に、何を提供すれば嗜んでもらえるのか。まずは、今のお客さんに聞いてみることにした。(第6話を読む)
数少ない既存顧客の中でも、ここ数年、変わらず発注をくれている会社がある。
いつもの打ち合わせが終わったあと、資料をカバンにしまいながら、言ってみた。
「つかぬことを伺いますが……ご発注を続けていただいている理由って、何ですか」
担当者は一瞬面食らった顔をしたが、すぐに笑った。
「どんな案件でも、まずは出来る前提で考えていただけるので、すごく心強いですよ。本当はもっと上流のこともお願いできたらと思うんですが、なかなかウチもそういう案件がなくて」
「上流……ですか?」
「図面が固まる前とか、試作の段階です」
すぐには意味が飲み込めなかった。
黙っている私に、担当者は続けた。
「イレギュラー案件に『まず考えてみます』と言ってくれる会社は本当に少ないんです。もちろん、技術力と品質も素晴らしいです。もし新たな販路を模索されているなら、上流工程を狙ってみるといいかもしれませんね」
会社に戻る車の中で、ずっとその言葉を反苿していた。
今のうちは、メーカーの三次下請ばかりだ。
言われたことを、言われたとおりにしかしていない。
ベテランの職人の言葉が、ふと頭をよぎった。
「最近の仕事、質が悪すぎます。」
あれは、加工の話じゃなかったのかもしれない。
実力以下の仕事しかしていない、という意味だったのか。
では、うちの本当の実力って、一体何なんだ。
その答えは、私より社員の方が知っているんじゃないだろうか。
今日の主人公のノート
□ 分かったこと
・顧客はうちの技術力・品質を評価してくれている
・「上流工程を狙ってみては」と提案された
□ まだ分からないこと
・うちの本当の実力って、何なのか
□ 次に調べること
・社内の人にも、聞いてみようか
次回予告
社内の人にも聞いてみようと決めた恒一。しかし、やり方を少し間違えたことで、予想もしなかった反応が返ってきます。
運営者の実体験はこちら
私も以前、新規開拓ばかり考えていた時期がありました。
しかし、事業の方向性を考え直すきっかけになったのは、新しい出会いではなく、既存のお客様との対話でした
あなたの経験をお聞かせください
あなたの会社の本当の実力を、顧客の言葉から気づかされたことはありますか。
自分では当たり前だと思っていたことが、顧客には強みに見えていた——そんな経験があれば、ぜひ聞かせてください。

